大判例

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高知地方裁判所 昭和24年(行)81号 判決

原告 岡田佐之助

被告 中村税務署長

一、主  文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は「被告が昭和二十三年三月二十日附で原告の昭和二十二年度所得金額を金四万円、昭和二十四年二月二十五日附で昭和二十三年度所得金額を金十万円と更正した処分ならびに昭和二十二年度随時所得税額を金千九百二円五十銭とした決定を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求める旨申し立て、その請求の原因として次のように述べた。

「原告は飮食店営業をしている者であるが、被告は原告の確定申告に対し昭和二十二年度所得金額を昭和二十三年三月二十日附で金四万円、昭和二十三年度所得金額を昭和二十四年二月二十五日附で金十万円とそれぞれ更正し、そしてその二十二年度所得金額に基き同年度随時所得税額を金千九百二円五十銭と決定した。しかし原告の営業による昭和二十二年度の総売上高は一万三千四百六円で必要経費一万一千二百七十余円を差引けば同年度の所得金額は二千百三十円となり、また昭和二十三年度の売上高は一万九千二百円で必要経費等一万七千余円を差引けば同年度の所得金額は二千五十五円となるにすぎない。従つて被告の処分は原告の所得金額を誤認した違法の処分である。ところで原告は盲目のため被告の処分を十分に了知せず昭和二十三年九月二十七日及び昭和二十四年一月二十一日の二回にわたり被告が原告所有の有体動産に対し右両年度の所得税の滞納による差押をして始めてこれを知り、被告の違法な処分の取消を求めるため本訴に及んだものである。」

そして被告の本案前の答弁に対し次のように述べた。

「原告は法定期間内に審査の請求をしたのであるがそれに対する決定がまだない。」

(立証省略)

被告指定代理人は先づ本案前の答弁として主文第一、二項と同旨の判決を求め、次のように述べた。

「本訴は行政事件訴訟特例法第二条、所得税法第四十九条所定の要件を具備しない不適法な訴である。すなわち政府の所得金額、所得税額更正の処分に対し不服のあるものはその通知を受けた日から一個月内に審査の請求ができ、審査の請求は審査請求書をその処分をした税務署長を経由して昭和二十二年度分は所轄財務局長に、昭和二十三年度分は所轄国税局長に提出してすることになつている。そしてこの審査の請求に対し決定を受けた上でなければ裁判所に対する訴の提起は許されない。しかるに本訴は被告の処分に対し両年度とも法定期間内に適法な審査の請求をしないで提起されたものであるからである。」

本案につき「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求め、次のように述べた。「原告主張の事実中被告が原告主張のような各行政処分をしたことは認めるがその余の事実は争う。原告は昭和二十二、三年度中に飮食店営業により相当の所得をあげている。両年度中に生計費として相当金額を支出している外その銀行預金も増加している。すなわち原告が昭和二十二年度中に支出した生計費及び所得税法により控除すべき必要経費を差引いた事業所得の合計額は四万二千四百三十三円となり、昭和二十三年度の合計額は十二万九百三十九円となる。そこで右所得金額の範囲内において原告の昭和二十二、三年度それぞれの所得金額を更正した被告の処分に何等違法な点はなく原告の本訴請求は失当である。」

(立証省略)

三、理  由

本訴が適法かどうかの点について判断する。所得税法第四十九条、同法施行規則第四十七条によれば被告主張のように政府の所得金額所得税額更正の処分に対し不服のあるものはその通知を受けた日から一個月内に審査の請求ができ、審査の請求は審査請求書をその処分をした税務署長を経由して昭和二十二年度分は納税地の所轄財務局長に、昭和二十三年度分は所轄国税局長に提出してすることになつている。そしてかように審査の請求ができる場合は行政庁である被告の処分の取消または変更を求める訴はその審査の請求をしそれに対する決定を経た後でなければ原則としてこれを提起することができないことは行政事件訴訟特例法第二条の明定するところである。ところで成立に争いのない乙第一号証、証人楠木一男、鎌田伊勢男の各証言を綜合すると原告は被告から遅くとも昭和二十三年三月末日頃までには昭和二十二年度所得金額所得税額更正の通知を受け昭和二十四年三月上旬頃までには昭和二十三年度のそれの更正の通知を受けていること、その後原告はその更正の処分に対し口頭あるいは書面で被告に対し異議の申立をしていること、しかしその書面による異議の申立はその内容がいわゆる陳情的な文書であるのみらず、その名宛人は直接被告に対するものであつて財務局長あるいは国税局長に対する書面ではなかつたこと、しかもそれは昭和二十四年四月十八日以後において被告に提出されたものであることが認められ、これに反する原告本人尋問の結果(第一、二回)は採用できないし他にこの認定を動かすに足りる証拠はない。しからば原告が被告の処分に対し法定の一個月内に適法な審査の請求をした事実はないといわねばならない。そして原告が盲目であるとの事実だけでは行政事件訴訟特例法第二条但書によりそれを直ちに訴の提起を許すに足りる事情といえないこと勿論であるし、他に審査の請求に対する決定を経ないことにつき正当の事由があることを認めるに足りる証拠はない。しからば本訴はそれを提起するための前提要件を欠く不適法な訴であるといわねばならない。

そこで本件訴はこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 森本正 安芸修 谷本益繁)

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